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2003年8月

■悲しきコーヒー

新しいスタッフが最初に叱られる事は決まっている。

集金や宅配の人に「御苦労さん」と言った時。「二十歳やそこらで自分のお父さんほどの年齢の人に御苦労さんですって、明日から事務所には来んでいい!」と青筋立てて怒鳴る。スタッフはなんで叱られたのかきょとんとしている。「御苦労さまって目下の人をねぎらう時に使う言葉。有り難うございますと言うのが美しいよ」とたしなめると始めて納得してくれる。

昔の日本の家屋はとてもオープンでつまり開けっ広げでいろんな人が出入りした。母達はそのつど手際よく対応していたと思う。

近所の人、富山の薬売り、御用聞き(お米やしょう油などは切れそうになるとお店が届けに来た)郵便屋さん。勝手口や縁側、玄関先でそれぞれに用事を済ませたが、汗をびっしょりかいて小包を届けに来た郵便屋さんに母は認印と一緒に冷たい麦茶を手早く出していた。自動販売機が普及し、一分一秒をあらそって荷物を届ける人に飲み物を勧めて時間をとらせるのはかえって迷惑な時代になってしまった。しかし今でも顔なじみの野菜やさんが配達をしてくれた時や修理の人には必ず飲み物をお出しする。ぐいっと一口で飲めるように量も温度も程々にと気を配るのもスタッフの大切な仕事。

先日こんなことがあった。食料庫のドアの鍵が壊れて開かない。近所の鍵屋さんに修理をお願した。終わって何を思ったかスタッフは「有り難うございました」とたっぷりの熱々のコーヒーにクッキーを添えて勧めた。鍵屋さんはイスに座って「奥さん、私は防犯に付いての講習会で話しをする立場ですが、この事務所のドアはプロには簡単に開けられますよ。鍵を代え無いと物騒ですよ」とおっしゃる。「事務所にはお金も貴重品も何もありませんから大丈夫」と私。「そういう場合、強盗に早変わりして帰宅をまちぶせしますよ」とさらにおどされる。「ここは事務所だから夜中に出入りはしません」と答えると「そういう場合は腹いせに灯油をまいて火を付けて帰りますよ」

私は黙りました。修理はゆるんだネジを締めるだけだったので5分で終わり、料金は6800円。高いですねとも言わず「有難うございます」とねぎらってお茶までお出した結果がこれ。親切のつもりで言ってくれたと思いたいけど...。思い出すと今でもゾッとする。後でスタッフが私からこっぴどく叱られた話しは恐すぎるので省略します。
お気に障ったらごめんなさい。
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