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アヴァンティ 2006年 11月号

■「化粧」

素顔のままで出かけてしまい「しまった!」と思いました。街は美しい装いの女性たちで一杯です。「どうぞ知っている人に会いませんように」とこそこそ隅っこを歩いていたのにやはり。「まーぁ、お久しぶり」
同級生です。ショッピングだという彼女はブランドのバックを持ち、メークもバッチリです。二人並んで歩くと化粧気なしで普段着の私はまるで付き人。

私たちは団塊の世代ですが、高校を卒業するころに大手の化粧品メーカーによるメークの講習がありました。今と違ってリップクリームさえ、つけたことの無い女生徒にとってワクワクする一日でした。今でも講師の付けまつげと赤いマニキュアをはっきりと思い出せます。顔はあくまでも白く、目はパッチリと唇は赤く艶やか。モデルになった友人はメイクされてビックリ人形のようになって教壇のイスに座っていました。疑うことを知らなかった若い頃の私はその化粧法をしばらくは実践していたと思います。 なんて罪深い講習会でしょう。
話が横道にそれましたがバッタリと出会った同級生は今だにその化粧メーカーの呪縛から逃れられていないようです。
料理を仕事と決めた私に濃い化粧はタブーです。清潔感を失わない様にとだけ気をつけて暮らしてきました。ところがある日鏡をみて驚いたのです。肌はくすみ眉毛はまばら、まぶたが下がり細い目はいよいよ糸のよう。顎を始め顔全体の輪郭が曖昧になっています。若い頃と同じ様にしていてはダメです。それからフアンデーションをつけ、唇には必ずリップブラシを使って口紅を塗り、アイメイクも怠りなく、これで一安心。化粧は中高年になってこそ必要だと気付いたのです。

しかし話は終わりではありません。最近鏡をみて更に驚きました。顔に険があるのです。つまり顔が怖い。(性格の恐さはほっておいてください)若さにしがみつきたい焦りが顔を卑しくしています。慌ててティッシュで化粧をふき取って、おそるおそる再び鏡を覗きました。そこには少しとぼけたおばさんの顔がありました。トーンが落ちた口紅の色はかえって今風です。

ある歳を過ぎると、ちゃんと化粧をしてから少し落としたくらいがけばけばしくなくて良い様です。化粧の好みは人それぞれでしょうが、やはり年齢相応の化粧法はあると思うのです。


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